医薬品製剤及び食品等中の病原菌を検出するために一般的に行われている検査は,増菌培養,選択分離培養,鑑別培養と目的菌の分離のために何度も培養を繰り返した後,疑わしいコロニーについて生化学性状試験,血清型別試験,毒素産生性試験等を行なう1),2).このため,判定結果が得られるまでに多大な労力と1週間程度の時間を必要としている.現在,病原菌の検出でキット化されている迅速測定法は,主に酵素免疫測定法(ELISA法)やイムノクロマト法などの免疫学的検出法とPCR法などの遺伝子検出法に大別される.以下に主要な測定法について述べる3),4),5),6).また,図4に従来法である培養法と迅速測定法の試験過程を示し,表1にそれぞれの測定法の対象となる病原菌,検出感度,分析時間をまとめたものを示す.
図4 病原菌検査の過程(培養法と迅速測定法の比較)
表1 病原菌検出における迅速測定法の一覧

3. 1 免疫学的検出法
3. 1. 1 ラテックス凝集法
抗体をラテックス粒子に結合させ,凝集反応により菌の存在を判別する方法で,病原菌の血清型や分離菌株の毒素を証明する方法として開発された.ラテックス試薬をスライド凝集板に塗布し,菌体と混ぜるのみで陽性(凝集塊有り),陰性(凝集塊無し)の判定ができる.本法は操作が簡便で反応時間は短く,判定が容易であるが,食品や医薬品製剤等からの病原菌を証明する方法としては検出感度などに問題がある.一般的に増菌培養後,選択分離
培地上の疑わしい集落について用いるため,培養法との併用となる.
3. 1. 2 酵素免疫測定法(ELISA法)
臨床診断の分野ではもっとも幅広く用いられており,抗原抗体反応と酵素基質反応が組み合わされた手法である.具体的には,特異抗体をマイクロタイタープレートあるいはチューブに固着化し,試料を添加する.特異抗原(病原菌)が存在すると抗体と結合する.これに酵素標識抗体と基質を加えると,発色反応により呈色する.検出感度は1mL当たり103〜105個であるので,食品や医薬品製剤等から直接病原菌を検出することは困難である.このため,培養法との併用が必要となる .
3. 1. 3 イムノクロマト法
ELISA法を応用した方法で,その原理(一例)を図5に示す.試料を試料導入部に滴下し,抗体が特異抗原(病原菌)と結合し抗原抗体複合体を形成する.その複合体が展開部を毛細管現象により移動し,抗体を線上に塗布させた部分(テストライン)で集中的に捕捉させることで色付きの線が現れ,陽性と判定する.また,余剰の金コロイド標識抗体が展開部をさらに移動し,チェックラインに固定化された抗マウス(ウサギ)免疫グロブリン抗体に結合し,金コロイドの色付きの線が生じる.この線により,正常に反応が進行していることを確認する.測定時間は15分〜30分ほどで非常に簡易,迅速であるが,検出感度は1mL当たり105個程度であり,培養及び濃縮等の前処理との併用が必要となる.
図5 イムノクロマト法の原理


3. 1. 4 磁気ビーズ法
大腸菌O-157の検査で増菌培養を短縮化する方法として注目を集めた.抗体を結合させた磁気ビーズに試料を混合し,反応させた後,特異抗原(病原菌)が結合した磁気ビーズを磁気で集めることにより,目的病原菌を効率よく分離・濃縮できる手法である.この利点から,本法とELISA法を組み合わせて,効率よく病原菌を検出する手法も開発されている.
3.2 遺伝子検出法
3.2.1 DNAプローブ法
目的病原菌の特異的な遺伝子をターゲットとして結合するオリゴヌクレオチドプローブを用いて検出する方法である.プローブは酵素,蛍光標識団などで標識されており,目的病原菌を蛍光,発光などにより検出する.プローブの配列を目的に合わせて選択することにより,多種多様な病原菌の検出が可能となる.ただし,試料中の病原菌は微量であるため,検出の前段階として増菌培養が必要である.
3.2.2 PCR法
目的病原菌の特異的な遺伝子をターゲットとして図2のようにPCRにより増幅させ,増幅したDNAを濁度または蛍光で検出する方法である.プライマーの配列を目的病原菌に特異的な配列で設計し,PCRを行うことにより,多種多様な病原菌の特異的な検出が簡易,迅速に可能である.理論的には1個の菌から検出可能であるが,試料中には核酸分解酵素(DNase)などのPCR反応阻害剤を含む場合があり,すべての試料において本法が利用できるとは限らない.本法は検出感度上昇,生菌と死菌の区別及びPCR反応阻害剤を希釈する目的により,増菌培養を行ってから検出する場合が多い.